炎の霊能者О先生のお話

炎の霊能師 О先生

なんと言っても大変印象的な先生でした。
仮にO先生としておきましょう。
私のように占いベテラン組でも、「霊感」という分野は、一種オカルト的な、摩訶不思議な印象を受けるものです。
先生との出会いは、とある喫茶店で鑑定してもらったことです。

その店の紹介用紙を見てみると、姓名判断。
霊感占いと書いてあって、ちょっと興味をそそられて値段も三千円と奇妙に手ごろですし、さっそく見てもらうことにしました。
鑑定室に入ると白髪の、年の頃六十歳ぐらいのおじさんが待っていました。

いかにも、ニコニコと人の良さそうなその先生は、首から胸にかけて、とても大きな玉のお数珠をしていて、なにがしかの妖しげな雰囲気を漂わせていた。

用紙に生年月日と名前を書くように言われましたので、私は、すらすらと、生年月日と、生まれた時間までおまけして書き、紙を渡しました。

「よろしくおねがいします」

「はい」

受け取った先生は、そのメモ用紙を、じーっと見て、う~~んと悩んで動かなくなってしまい、難しいのかな、わからないのかな?と、心配した私は
「いやぁ私は、どうも運が悪いらしいです。結婚もしていません。いい人いなくって。仕事運も良くなくってぇ」
などと、さりげなく助け舟を出しました。


ふっと顔をあげたO先生は
「いやぁ。どちらかというと他の人よりも運の良い方です。あなたは、結婚してっから運がとっても良くなります。32歳ぐらいで玉の輿とは言えないけど、とても良い結婚をされますよ」

と、言われました。
「そうですか。」

「そうです。それから運が良くなるのは、夫の力ですな。貴方は自分ででしゃばって運を悪くしているので、十言うところを五つか六つにしてください。」

私はかなり大人しいタイプです・・・と、正直に言いますと、
「それは、全然違う!」
と、かぶりを振ります。

「単純すぎます。猪突猛進してしまうから」

「・・・(なんかこの先生はっきり言う人だな)」

その他にもいろいろアドバイスを受けたけど、なかなか的確な鑑定で、その日わたしは上機嫌であった。
それから、数ヶ月後、私は32歳よりもだいぶ前に結婚をしたわけであるが・・。
まあまあ楽しく毎日を送っているし安定しているから、幸せな部類といっても良いのかもしれない。
夫は家事育児をまめに手伝ってくれるし、こまめに働いてくれる。
さほど裕福でもなけど、不自由している訳もないといったところ。運が良くなったかどうかはまだわからない。


その先生が言うには、質問を受けると、その情景が目の前に浮いてくるという。
「さるたひこ大明神」という神様が先生のバックについていて、人を導くときに指示してくれるらしいです。

さらに後日、先生と雑談していた時に意外なことを言われました。
「私は本当はあまり占いは得意ではない。未来を当てたりアドバイスするよりも、もっと霊を扱う分野が専門です。霊視したり、霊をお払いしたりね」

先生はお茶を飲みながら、思いついたようにそんなことを言い始めた。

「そうですか。では先生。もしかして守護霊とかその人の前世なんてわかるんですか?ちょっと占いではわからないところです。」

「わかりますよ」

「本当ですか?」

「はい」

「ええー♪先生そういうことは、早く言ってください。そうですか、ぜひぜひ、私の前世を見てみてください」

「はい」

う~~んと瞑想を始めた先生。なんだかな・・本当にわかるのかな・・はた、と顔をあげた先生は感心したように言い放ちました。

「あなたの前世は~~~~のぶしですね。女の、野武士。いや、これはめずらしいですねー。変な恰好をしています。」

「ええ・・? のぶし・・先生、のぶしって何?!」

「野武士。なんでもすごくえばっていて、男みたいですよ。人にさしずしているみたい。あーあ。」

「ガーン」

「馬にのっていますねぇ。あーあ。」
「ま、仕方がないことですよ。何せ、当時は乱世でしたからねぇ・・」

と、なぐさめてくれました。よりによって、野武士とは・・・。
前世、というと、本当にあるのかな、と思うと同時に、みんな自分の過去世に一抹の期待を抱いているのではないでしょうか。
ヨーロッパが好きで、前世はもしかたらフランス人だったのかな、とか、自分が華やかな衣装をきて、舞台に立っているところを良く夢に見るので女優だったのかもしれない、など。
はっきりしないことには、人は甘い夢を抱くもの。
まさか、私も自分の前世が野武士だとは、全然イメージが違うと思い、私はとまどった。

さらに、
「あなたの旦那さんは、とても高貴な方だったようですね。」

「え、旦那は高貴?!では、その野武士と、高貴な朝廷の人間がどうして現世で夫婦になったんですか?」

「さあー・・・・・。どこかで、縁があったんでしょうねー」

旦那が、朝廷の高貴な人間だということにもちょっとびっくりした。
そうに言われてみれば、夫は時々、立ち振る舞いが優雅な時もあるし、なんとなく他人から尊敬されることもあるらしい。
考えれば考えるほど、そうに思われてくるのが不思議である。
まあ、先生が言うには後3年後に、大きなお金が動いて金銭に不自由のない生活に入るそうだから、当たるように祈るばかりである。
その先生は生まれもった霊感を使って、人を救うことが自分の使命であるという。
毎日朝から飛び回っているみたいだし、これからも頑張ってもらいたい。
先生、今度時間が出来ましたら、ぜひ一緒にお茶でもしましょう。


後日、主人にこの話をすると「あ、俺覚えてる!!あの時はつまらなかったので森の中を散策していたら野武士に捕まったんだよ。その時に君が出てきて助けてくれんだ。あの時はどうもありがとうね」
と、言われました。

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