〜Early Spring … 早春の庭〜
春への道のり

まだ木枯らしの吹きすさぶ庭にも、
少しずつ、少しずつ、でも確実に春はやってきます。
陽差しにすっかり温められたレンガの間に、
庭の隅の落ち葉の吹き溜まりの下に、
あるいはふと見上げた背の高い裸木の枝先に、
小さな若々しい緑の芽が、
そぉっと辺りをうかがうように可愛い顔を覗かせて、
冷たい風の行き過ぎるのをじっと耐えながら
春を待ちわびています。

2月ともなれば、時々驚くほど暖かい日もあって、
日差しを浴びてほっこりと柔らかな土の中では、
そろそろこぼれ種の芽も動き出すことでしょう。
めぐり来る春へ、あるがままの自然の命たちは、
私の庭をどんなふうにデザインして見せてくれるでしょうか…



私の庭に、最初に春を告げてくれるのはウメ。すっかり葉を落としてこれから本格的な寒さを迎えようというシーズンに、すでに枝先に芽吹いた小さな紅色の花芽は、年明けとともに日々次第に大きくなって、まだ冷たい北風の吹くなかで開花の時を迎えます。老木の枝先まで埋め尽くした、白く気品溢れる花の姿はもちろん、あたりに漂う芳しい香りは、何よりも嬉しい春の便り。いにしえの歌人たちが、その題材として好んで詠んだのもうなずけるような気がします。
(2000.2.14)

玄関の横に少しだけ和風の雰囲気を演出しているコーナーでは、ヒイラギナンテンが黄色い小花をつけ始めています。娘の誕生日の花とされているヒイラギの仲間を私がコレクションしていると知って、いつもお世話になっている植木屋さんの矢神さんが持ってきて下さったもの。やがて春が過ぎて濃い紫色の実を結ぶ頃も、また違った姿で楽しめます。
(2000.2.14)

Big Maryの根元に、ずっと植えたままになっていたクロッカスが、今年も他の草花に先駆けて開花しました。朝のうちはすっかりBig Maryの影になった暗い地面の際に、すくっと伸びた白い蕾はまるで蝋燭のよう。やがてふっくらとした花びらが開いて、炎をともしたように赤い雌蕊が顔を覗かせます。今年こそはもっと陽当たりの良い場所に植え替えてあげるからね、と約束しつつ、いったい何年経ってしまったでしょうか。それでも健気に春を告げてくれるから、また今年もこのまま甘えてしまうかも…
(2000.2.14)


+++ My Happy Valentine ! +++
北の国から届いた嬉しい贈り物




その朝、私のもとに可愛いピンクの花をたくさんつけたヒースの鉢が届きました。この花が好き…。そんな話をつい数日前に電話で交わした友人からの、私あてのセントバレンタインデーの贈りものでした。

英国のブロンテ姉妹の小説、『嵐が丘』『ジェーン・エア』などの舞台となったヨークシャあたりの荒涼たる大地に、激しい気候に立ち向かうように咲き乱れるというヒースは、一度はこの目で見てみたい光景です。ヒースには、この英国から地中海沿岸に自生するヨーロピアンヒースと、南アフリカ原産のケープヒースと、大別して二つの種類がありますが、「エリカ」という名称で園芸店に並ぶ品種の殆どは花色・花形ともに多彩なケープヒース。彼女から頂いたものも後者に属するもので、私の住むあたりなら露地で越冬ができ、耐暑性もある育てやすい品種です。北イングランドの荒野のヒースのようにダイナミックな育ち方は望めなくても、私の庭の新しい住人として、愛らしい花をきっと楽しませてくれることでしょう。

一般的な女性にとってのバレンタインデーは「贈る喜び」を味わうもの。もちろん私も家族や仕事でお世話になっている方々に、愛や敬意や多少の義理も込めて準備しました。でもこうしていただく喜びはまた格別。あまり植物には興味のないはずの彼女が、まだ雪に埋もれた厳冬の北の町で、いったいどうやってこのヒースを探してきたのかと思うと、なおさら感激でした。これから先のひと月は、お礼の品を選ぶ楽しみも味あわせていただきましょう。

さて、上に掲げた春浅い北の大地の写真は、この苗を作られたガーデンの方が添えて下さったメッセージカード。育て方のご親切なアドバイスなどが書かれて、とても感激いたしました。
(2000.2.14)


Big Maryの愛称でお馴染みの、私の庭の主ローズマリー・マリンブルー。今年はとてもたくさんの花を咲かせてくれました。皆さまは、ローズマリーの香り、というと、どんな香りを想像されますか?きっと殆どの方が、あのきりりとした葉の芳香を思い浮かべることでしょう。私にとっても、ローズマリーの香り、というのはあの葉の香りそのものでした。ところが、先日たくさん花をつけた枝に顔を近づけたとき、今まで一度も感じたことのない甘い香りがするのに気付きました。まぎれもなく花の香りです。ポツリポツリと咲いたくらいでは、葉の強い芳香に負けてしまうのでしょうが、さすがに枝先を青紫に埋め尽くすほど咲き誇っている花は、私も良い香りなのよ!と、さながら自己主張をするが如く気品のある甘い香りを漂わせていました。早々と庭にやってきた小さな蜂たちが、日がな一日この木のまわりで羽音をたてているのも、納得がいきます。 すっかり長いお付き合いになったBig Maryですが、こうして新しい感動を与えてくれるのですから、やはり私はいつまでたっても彼女の魅力に飽きることはないでしょう。
(2000.3.5)

確かとても洒落た名前があるのですが、我が家ではハナニラと呼んでいます。こんな可愛らしい花を咲かせるというのに、葉の香りはまさにニラそのもの。古くからこの庭にあったもので、特別なケアをしていないのに毎年この時期になると、庭のあちこちで白、あるいは少し青紫がかった白色の花がたくさん咲きます。まだ花の少ない庭の貴重な華やぎです。これは球根で自然に増えるとても丈夫な植物ですので、のびのびと出来る場所を選んで育ててあげたいですね。
(2000.3.28)

早春の庭を彩る球根植物の中でも、私はムスカリがとても好きです。まだ寒さの残る庭に細く長い葉が伸び始めると、その中心あたりに小さく堅いつぼみが顔を出します。やがてその茎が少しずつ伸びてきて、同時につぼみがほんのりと色づき始め、まるで春の訪れに歩みを揃えるかのように、一斉にキュートな姿で咲き誇ります。
花壇では背の低いムスカリはボーダーとしてよく利用されますが、私の庭では例によって極めてワイルドに、そこここに顔を出して小さな茂みを作ります。たまには球根を掘り上げて整然と植え替えをしようか、とも思うのですが、あるがままに咲く姿も捨てがたくて、ご覧の通り木の根元の枯葉の吹き溜まりにまで咲かせているのです。この白いムスカリがぐるりと取り囲んでいる海棠の大木も、間もなくあでやかな開花を迎えます。
(2000.3.28)

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