biohazard zero
2002.12.15.
死地へのドライブ。
その日、オレは軍の特殊車両で基地から基地へと移動している最中だった。――いや、移送というべきか。無愛想なMP(憲兵隊員)に監視されながら、大人しく、従順に。車の堅いベンチシートに座っていた。逃げ出せないように掛けられた手錠の片方はシートの脚に繋がれている。
こんなモノで繋いでおく必要なんて、無いのにな。
どんなに足掻いたって無駄なんだ。ここから逃れられない。逃げるつもりもない。
どのみち、オレの人生はもう終わっている。
ビリー・コーエン。合衆国海兵隊所属。階級は少尉。
……元、と付けるべきだろうか?
もう、どうでもいい。
名前や所属、階級はその意味を失った。MPの連中にとって今のオレは、目の前を通り過ぎてゆく数多くの犯罪者の一人に過ぎないのだ。
合衆国と星条旗に、一生忠誠を捧げる。
入隊するときに誓った。あの気持ちは今も変わらない。
何が悪かったのだろう。
何処で何が、狂ったのだろう。
オレはただこの国を愛し、ベストを尽くそうとしただけだったのに。
オレはあの時、どうすべきだったのか。命令よりも、己の良心に従うべきだったのか?
今なら答えは、イエス。
しかしそれは虚しい仮定でしかなく、名前や少尉という階級同様なんの意味もない。
撃とうが撃つまいが。
あの時アレが起こるのを止められなかった。
それがオレの罪。
軍がオレに与えた最後の命令。
判決を言い渡されたあの瞬間……。海兵隊の為に死ねと、言われた気がした。
海兵隊の汚名をそそぐ為に、全ての罪を被せる為に選ばれた。
オレは、スケープゴート。
- Fin -