Honey
2011.04.10.
どんなに泣こうが喚こうが非情なまでに時は過ぎ、朝がやってくる。今朝もまた、分厚いカーテンという障害をものともせずに、朝日と冷気が部屋の中へと侵入してきた。
時計のアラームがけたたましく騒ぎ出す五分前。体内時計のアラームの方が先に騒いで俺は目蓋を引き上げる。
その僅かな俺の変化を敏感に察知し、柔らかくて暖かな腕が絡みついてきた。そしてもう少し一緒にいてくれと甘く囁き俺を引き留めようとする。
冬がひっそりと近づいてくるにつれ、これはもう毎朝お馴染みのやりとりになってしまった。
俺を抱くその温もりが、日に日に愛しく離れがたくなる。
陽が空気を温ませるまで、あるいは草木が芽吹くまで、こうしていられたらどれほど幸せだろうか。
だが、人間は冬眠出来ないし、生きていく為には働かねばならん。
「悪いな、ハニー。時間切れだ」
覚悟を決めると俺はその温もりを払いのけ、冷気の中へと己を追い立てた。
※ハニー = 布団
- Fin -