JUNK : 05

Carlos & Jill

2005.04.09.

 ホルターネックの黒いドレス。背中が大きく開き、程々に胸元も開いている。タイトなロングスカートの両脇に入ったスリットは、片方が膝までなのに対し、もう片方は太股の半ばまで達していた。控えめに言っても、かなり深くてきわどい。
 一体どういうつもりなんだろう。
 絶対にあれは、自分の姿が男の目にどう映るのか分かってないんだ。――いいやそれとも全部計算の上なんだろうか。彼女のことだから、それは十分にあり得る話だ。彼女がやることにあれこれ口を出すつもりは無いんだが、今夜はちょっとサービスし過ぎじゃないのかい。
 ほら。見ろよ、今すれ違った男の目を。洗練されたインテリを気取ってるけど、まるで発情期のサルだぜ。連れてる女のエスコートをほったらかして、今にも彼女を口説きに行きそうじゃないか? 奴が今すぐそうしないのは、片手に女を抱いているという現実があるせいだ。あの女を適当な誰かに預けたら、奴はきっと彼女の後を会場中ついて回るんだろう。
 残念だな、お前らにはこの先一生かけたって腕以外の素肌に触る事なんて出来やしないよ。それ以上進むチャンスだって無いはずだ。でも俺は違う。彼女がその気になってくれさえすれば、どんな場所にだって触れられるんだ。
 ほとんどの男がモノにしたいと思うような女。そういうひとが自分のモノだというこの事実は、めまいがする程の優越感を俺にもたらす。
 同時に内を焦がす独占欲。
 あんな姿の彼女を他の男共に見せたくない。奴らが彼女に投げつける視線が気に入らない。今すぐクロークに引き返して、預けたばかりのコートできみを覆ってしまいたい。
 だがそんなことができるはずもなく、だから俺はそうする代わりに群がりはじめた男共を強引に押しのけて彼女の隣に立つと、見せつけるように彼女の腰に腕を回して抱き寄せた。彼女は俺のモノだ、というちょっとした示威行動。
 彼女はちょっと驚いたように俺を見上げて、それから苦笑した。なんで俺がそんなことをしたのか、全部分かってるようだった。
 あぁ、ジル。やっぱりきみは最高だよ。



- Fin -





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